この緩和ケアの核となるのが、モルヒネに代表される「医療用麻薬」です。医療用とはいえ、“麻薬”と名がついているせいか、“中毒になる”“寿命を縮める”といった誤解があるようですが、どちらもウソ。医師の指示を守って使えば、中毒になることもなく、すぐれた鎮痛効果が得られます。
ところが、日本における医療用麻薬の使用量は1日あたり116グラムで、米国の16分の1と非常に少ない。米国ではがん以外の痛みにも医療用麻薬を使いますが、日本の使用量が極端に少ないのは事実で、「末期がんの痛みは取れない」という誤解は、医療用麻薬の使用量の少なさにも理由があるでしょう。
緩和ケアに慣れていない医師がいるのも事実ですが、国や都道府県が指定する「がん拠点病院」なら緩和ケアのスタッフが揃っていて安心です。
中川恵一・東大医学部付属病院放射線科・准教授
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁