Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【今井雅之さんのケース(1)】痛みも不眠も食欲不振も消すことができる

 この緩和ケアの核となるのが、モルヒネに代表される「医療用麻薬」です。医療用とはいえ、“麻薬”と名がついているせいか、“中毒になる”“寿命を縮める”といった誤解があるようですが、どちらもウソ。医師の指示を守って使えば、中毒になることもなく、すぐれた鎮痛効果が得られます。

 ところが、日本における医療用麻薬の使用量は1日あたり116グラムで、米国の16分の1と非常に少ない。米国ではがん以外の痛みにも医療用麻薬を使いますが、日本の使用量が極端に少ないのは事実で、「末期がんの痛みは取れない」という誤解は、医療用麻薬の使用量の少なさにも理由があるでしょう。

 緩和ケアに慣れていない医師がいるのも事実ですが、国や都道府県が指定する「がん拠点病院」なら緩和ケアのスタッフが揃っていて安心です。

中川恵一・東大医学部付属病院放射線科・准教授

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。