患者さんの中には、「不安を抱えたまま生活を続けるくらいなら、手術で一気に治したい」と考える方もいらっしゃいます。しかし、手術中のリスクは少ないながらもありますし、術後に合併症を起こすこともあります。そういった手術を受けたことによって生じるリスクを考慮すると、病状が進行した状況でなければ、手術適応にはならない場合がほとんどです。
それでも、「不安だから、とりあえず手術したい」という患者さんが増えてきていることで、まだ手術をする必要がない早期の段階で、手術を行う病院が増えてきています。しかし、これは合併症などのリスクを上げることにつながり、患者さんにとっては大きなマイナスです。
最近も、段階を踏まずに手術を受けた患者さんが、思わぬ有害事象に見舞われたケースがあります。
定期健診で「大動脈が通常より太いから、大動脈瘤の疑いがある」と指摘された患者さんが、ある大学病院を受診したところ「すぐに手術した方がいい」と勧められ、言われるがまま手術を受けました。しかし、術後に傷口での院内感染を引き起こす「MRSA」に感染。取り換えた心臓の弁も外れてしまって、結局、当院で再手術することになったのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」