天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓病患者は合併症を抱えている

 心臓病の患者さんは、他に何らかの病気を抱えている人が圧倒的に多く見られます。65歳以上の高齢者になると、合併症がない患者さんはほとんどいません。とりわけ高血圧や動脈硬化、糖尿病といった生活習慣病は、心筋梗塞、狭心症、弁膜症、大動脈瘤などの心臓病を引き起こす危険因子なので、抱えているのが当たり前ともいえます。

 合併症がある患者さんに対しては、心臓手術を受けた際、たとえば糖尿病でインスリン治療を受けているとどれぐらいリスクがアップするのかなど、解析データが細かく出ています。1万~10万例ほどの患者を対象にした分析が、「ジャパンスコア」や「ユーロスコア」といったリスク解析モデルではっきりわかっているのです。

 そのため、われわれ心臓外科医が患者さんに手術の説明をする時は、「今回の場合はリスクがこれだけ上がっている」ということを十分に理解してもらい、お互いが了解した上で進めていくことが常識になっています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。