心臓手術の際、数ある合併症の中で一番気を付けているのは、脳梗塞などの脳血管疾患です。その既往がある患者さんの場合、手術中に再び脳梗塞を起こせば、意識が戻らなくなる危険があります。手術中はどうしても血圧が下がるため、脳の血流も悪くなってダメージを与えます。また、脳梗塞を予防するための薬を、心臓手術のために飲むのをやめたことで、新たに脳梗塞を起こす可能性もあります。
そうしたリスクを考慮し、細心の注意を払いながら手術を進めていかなければなりません。麻酔科医は麻酔中に血圧を下げないようにしたり、人工心肺を使う場合は血液の流量を多くするなどして、なるべく脳の血流を減らさないように努めます。脳の血流や酸素供給量などを計測できるモニターなども張り巡らせ、より丁寧で高度なモニタリングが求められます。
他には、腎機能障害の合併症にも注意を払わなければなりません。高齢者は腎機能が悪化していることが多いので、とりわけ慎重に臨む必要があります。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」