医療用語基礎知識

【増える老衰死】死因の5位だがピンピンコロリではない

 これだけを読むと、確かに老衰死は理想的な死に方のように感じられます。しかし、これといった病気がないから寝たきりや要介護とは無縁、というわけではありません。内閣府の「高齢社会白書」(平成26年版)によれば、要介護者の13・7%が「高齢による衰弱」、つまり老衰によって介護が必要になったと記されています。老衰だからピンピンコロリというわけではないということです。

 また、老衰が原死因と考えられる場合は、別の直接死因があったとしても、老衰死としてカウントされます。死亡診断書記載マニュアルには、たとえば老衰によって物を飲み込む力が弱り、誤嚥性肺炎を発症して亡くなった場合には、原死因として老衰を記入せよ、ということが書かれています。我々が思い描いている老衰死の印象と、かなりかけ離れているかもしれません。

 さて、それらのことを理解したうえで、死因における老衰の順位を見てみると、なんと第5位につけています。2013年の統計によれば、がん、心疾患、肺炎、脳血管疾患の次が老衰です。人数にして約7万人。死亡者全体の5・5%。死者18人に1人が老衰死という勘定になります。

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やなぎひさし

やなぎひさし

国立大学理工学部卒。医療機器メーカーの勤務を経てフリーへ。医療コンサルタントとして、主に医療IT企業のマーケティング支援を行っている。中国の医療事情に詳しい。