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【音楽家の手の障害】 東京女子医科大学付属青山病院音楽家専門外来(東京・港区)

東京女子医大付属青山病院の酒井直隆医師(提供写真)

 診療日は毎週木曜の週1日(予約制)。担当する酒井直隆医師(整形外科非常勤講師)は、世界でも数少ない「音楽家の手の障害」を診る専門医だ。患者の9割はプロの楽器演奏者で、国内外から1日およそ50人が訪れる。

 演奏のし過ぎによる疾患で多いのは腱鞘炎、付着部炎(骨と筋肉をつなぐ部分の炎症)、筋肉・関節痛など手に痛みを伴うものだ。近年は、演奏時に指が勝手に曲がったり伸びたりするフォーカル・ジストニアという神経障害も増えている。

 音楽家にとって酒井医師は“救世主的存在”。通常、整形外科の治療では患部の安静・休養が求められるが、同外来の診療方針は
「毎日の練習を休まず治す」を大原則にしているからだ。

「練習を休んでいる間は痛みは取れるかもしれませんが、練習を再開したら痛むのでは休む意味がありません。しかも、練習を休めば演奏の質は確実に下がります。だからといって仕事をキャンセルすれば信用に関わる。年中、ステージを抱えている音楽家にとって、練習を休むことは実質上、不可能なのです」

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