現在、手術の現場で行われる輸血では、採血してから何も処理しない「生血」を使うケースはほとんどありません。GVHD(移植片対宿主病)という致命的な合併症を起こす可能性が明らかになったからです。生血には提供者の白血球が含まれています。それが患者さんの体内に入ると、患者さんの体を“敵”と見なして攻撃してしまうケースがあるのです。
GVHDが起こってしまうと、多くの臓器が障害を受け、患者さんはほとんど助かりません。残念ながら、私も過去に2例ほど経験しました。同じ血液型だからといって、うかつに生血を輸血するのは禁物なのです。
ただし、今はしっかりした対策が行われています。採血した後、生血に放射線を当て、白血球の活性化を失わせてから輸血に使うというのが標準化しています。
赤十字血液センターの輸血製剤の場合も、保存期限があるいわゆる輸血の場合にはすべて放射線照射を行い、有害な免疫反応を抑制しています。また、輸血から分離した成分で作る血液製剤に関しても、加熱処理してウイルスを死滅させ、抗原性についても不活性化させています。現在は緊急の輸血でも血液センターがほとんど対応してくれますので安心ですが、献血が不足する冬場は我々も身構えなければなりません。
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