米国の同意がなければ薬価も独自で決められなくなる

 今後は、米国政府が日本の国民皆保険制度自体を直接的に攻撃するようなことはないにしても、「現行の医薬品、医療機器の価格規制の撤廃・緩和の要求」を推し進め、「医薬品、医療機器の価格上昇の要求」にエスカレートしていく可能性があるという。

■識者が懸念する、日本の医療崩壊

 さらに、今回の「合意文書」の「付属文書」「日米間の交換文書」「国家戦略特区での議論」などを見る限り、「混合診療の事実上の全面解禁」や「株式会社の医療への参入」は時間の問題だ。

「TPPの大筋合意文は英語、フランス語、スペイン語で書かれ、経済圏2番目の日本語がないのは不可解です。TPPがスタートすれば、政府調達入札手続きや行政手続きもすべて英語表記が事実上義務付けられる可能性が高い。そうなると、日本企業は国内市場でありながら不利な交渉を強いられる可能性が大いにあります」(施准教授)

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村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。