Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

【村田喜代子さんのケース】子宮体がん 標準治療の手術を拒否する選択

村田喜代子さんのケース(C)日刊ゲンダイ

 福岡の自宅に夫を残して鹿児島でマンションを借りて1カ月。毎日通院しながら強い放射線のピンポイント照射を受け、がんは消え、節目の5年目を迎えた今も幸い転移はないそうです。

 作品では、放射線治療に伴う倦怠感(放射線宿酔)から夢うつつをさまよう主人公「わたし」の姿が描かれるシーンがあるように放射線の副作用もゼロではありません。「わたし」は放射線酔いに苦しみながら、事故で崩れた原発を幻視したのはとても苦しかっただろうと察します。放射線で皮膚や内臓の粘膜がただれることもまれではありません。

 それでも、副作用は一時的。切除手術に伴う後遺症は長く続く点で、その影響は大きく異なります。治療後の生活をどうするか。そこに焦点を当てると、標準治療の手術を拒否して、放射線治療を選択することも、その人の価値観によってはあり得ることでしょう。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。