薬に頼らないこころの健康法Q&A

英語の成績不振に潜む ディスレクシア(読字障害)の克服法

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 しかし、言語体系が英語圏と異なる日本では、英語圏の教育法を過大評価しても仕方ありません。ここはむしろ、日本の経験者の言葉から学ぶべきでしょう。

■携帯やタブレットを駆使するのも手

 南雲明彦氏という自らディスレクシアであることを公開して、啓発活動を行っている青年がいます。私もこの人の対談を動画で見ましたが、彼の話しぶりは、抑揚や強弱、速い・遅いの変化が豊かで、「読む・書く」のハンディを「話す・聞く」で補っていることが分かります。言語の視覚情報(書かれた文字)を音声情報に翻訳することは苦手であり、それを補うために、メモを取るかわりに携帯に録音したというエピソードも印象的です。

 ディスレクシアを含め、学習障害の人の生きるための作戦には2つあります。①弱いところを努力して克服すること②強いところを伸ばして、弱いところを補うことです。南雲さんの場合、①についてはそこそこにとどめて、キーボードやタブレットなどの機器で補い、むしろ②抜群の才能を持つコミュニケーション能力で弱みを補って生きているように思えます。

 個性を発揮する彼の生き方は、学習障害の人にとって大いに参考になるはずです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。