これで痛みを取り除く

膵臓がんの痛み対策は腹腔神経叢周囲に“アルコール注入”

「膵臓は、周囲の神経が網目状に密に集まっている腹腔神経叢と隣接しています。がんが進行すると、周囲の神経を直接、圧迫したり浸潤することで神経障害性疼痛を合併するのです。途中でオピオイドが効きづらくなるので、患者さんの中には耐性ができたと思う人もいます」

 神経障害性疼痛は、しびれ感やピリピリした異常感覚を伴う痛みで、内臓痛とは痛みの症状が異なる。膵臓のがんのできた場所によっては、背中にも痛みが表れる場合があるという。

「神経障害性疼痛に対しては、オピオイドをベースに抗けいれん薬や抗うつ薬などの鎮痛補助薬を組み合わせて痛みを取ります。それでも効きが悪い場合には、麻酔科によって行われる神経ブロックを検討します」

 膵臓がんをはじめとするがんの上腹部痛では、主に「腹腔神経叢ブロック」が有効。腹腔神経叢周囲のスペースにアルコールを注入する方法だ。日本緩和医療学会のガイドラインでは患者の70~90%で長期の痛みの緩和を得ることができるとされる。

「ただし、行う麻酔科医には熟練した腕が必要になりますし、専門家も決して多いわけではありません。残念ながら施行できる医師がいない施設もあります。一方で、上手な麻酔科医が行えば劇的に痛みが取れて、オピオイドの使用量も減らすことができます」

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