妻が「末期がん」になったら

<1>家族のサポート 「頑張れ」と背中を押さず寄り添う

「頑張れ」と背中を押さず妻に寄り添う/(C)日刊ゲンダイ

 どんながんであれ、エックス線やエコーなどでがんが疑われると、より精度の高いCTやMRIなどの画像検査、そして組織を採取して悪性度を調べる生検でがんを確定する。

“がんかもしれない”が、“がん”に変わるまでの間に、妻の気持ちは大きく揺れる。石井さんの妻も、ステージⅢの肺腺がんと確定するまで1カ月。その間ずっと一人で耐え、夫に冷静を装いつつ、心で泣いた。それを後から聞いた石井さんは自分を恥じた。

 肺がん治療の権威で、新座志木中央総合病院名誉院長の加藤治文氏が言う。

「がん患者さんに共通するのは、がんと診断されるまで自分の病状や治療法が分からず曖昧模糊とした状況に置かれることで募る不安です。治療法が固まり、治療が進むと、少しずつ覚悟が決まるのですが、抗がん剤治療のつらさなどでまた不安になる。そして、治療が一段落して訪れるのが、再発と転移の不安。周りからは落ち着いているように見えても、心は不安なのです。そういう妻に夫ができるのは、頑張れと背中を押すのではなく、妻の行動を認めてねぎらい、寄り添うことです」

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