天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心臓に負担大 「ゴルフの突然死」を防ぐ

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 そもそも、ゴルフは「心臓発作が起こりやすくなる状況」が整っているスポーツといえます。たとえば、朝早く起きてゴルフ場に出向くことが多いため、普段は高血圧の薬を服用している人が薬を飲むのを忘れてしまい、血圧が高い状態でコースに出るケースも少なくありません。これは、薬で血糖を下げている人も同じです。

 また、コレステロールを薬でコントロールしている人の中には、ラウンドする数日前からあえて服用を中断する人もいます。コレステロール降下薬は筋肉痛や関節痛などの副作用があるため、スイングに支障を来さないように薬をやめるというわけです。他にも、ラウンド中に水分を摂取せずに脱水状態になり、血液がドロドロのままプレーしているなんてケースもあります。

 いずれも、動脈硬化などによって血管内に形成されたプラークを破綻させ、冠動脈に詰まって心筋梗塞を引き起こす“下地”ができている状態です。そこに、起伏の激しいコースを歩いて回ったり、スイングやパットによって心臓に大きな負荷がかかるわけですから、突然死のリスクはアップします。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。