天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

お酒が体に引き起こす作用が心臓の負担を増大させる

順天堂大学の天野篤教授(C)日刊ゲンダイ

 年末年始はお酒を飲む機会が増える季節です。心臓疾患や生活習慣病を抱えている人はもちろん、そうでない人もアルコールが心臓にどんな影響を与えるかについて覚えておきましょう。

 一般的に、アルコールを摂取すると一時的に血圧が下がり、脈拍が増えます。アルコールが体内で分解されるときに作られるアセトアルデヒドという物質が増えて、血管を広げるためです。血圧が下がると、血圧を元に戻そうとして心臓は血液をたくさん送り出します。お酒があまり強くない人が飲むと、心臓がバクバクするのはそのためです。

 一方で、長期間の飲酒は血圧を上昇させることもわかっています。血管の収縮反応が高まったり交感神経が活発になって心臓の拍動を速めることなどが理由として考えられています。

 また、アルコールには強い利尿作用があり、脱水症状を引き起こします。脱水状態になると、血液の粘度が上がって流れにくくなり、全身に血液を送り出す心臓はそれだけ負担が増大します。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。