天野篤氏が語る ノーエリートが“天皇の執刀医”になるまで

心臓外科医の天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 当時は人工心肺装置を使って心臓を止める手術が一般的でしたが、拍動停止の時間が長いほど、患者は強いダメージを受けます。心臓を止めないオフポンプ手術は患者への負担を軽減できる分、回復も早くなる。

 ただ、速く正確な技術が求められるため、躊躇する医師がほとんどでした。しかし、私は「これこそが患者さんのためになる」という確信を持ち、可能な限りすべてのバイパス手術をオフポンプ手術で行うことにしました。そうやって実績を挙げたことが認められたのです。

■徹底的に突きつめることが自分自身の隙をなくす

 順天堂大に移った後も実直に手術に取り組み、12年には天皇陛下の心臓手術に携わらせていただくことになります。教授就任から10年、外科医としての能力を落とさず、オフポンプ手術の先頭に立っていたからこその光栄だと思っています。

2 / 3 ページ