Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

だいたひかるさんは全摘 選択肢増やす医師への質問の仕方

だいたひかるさん(提供写真)

 そうしなかった理由はなぜか。「オススメはなんですか?」という医師への質問の仕方にあったと思われます。外科医は手術をするのが仕事ですから、こう聞かれたら「全摘」と答えるのはある意味、当然でしょう。だいたさんと同じようなやりとりをした結果、残せたはずの乳房を失って悲しい思いをされる女性が少なくないのです。

 記事からは、がん告知によるショックで動揺している様子が見て取れます。診断直後は自殺率も高まりますから、動揺するのは当然。そういうときに、治療法や仕事のことなど生活の大切なことを焦って決めない方が無難。2週間くらい休んで頭を整理してから決めればいいのです。

 セカンドオピニオンを求めるなら、外科医ではなく、すべてのがん治療に精通している放射線科医に聞くこと。そうやって、「全摘以外の治療法はないか。乳房を残す可能性がある治療法はないか」と質問すれば、いろいろな治療の選択肢の中から納得できる治療法を選択できるのです。

 乳がん検診の対象は40歳ですが、フリーアナウンサーの小林麻央さんのケースのように、30代半ばでの乳がん発症は珍しくありません。30代でも、セルフチェックやパートナーと一緒にチェックすることが大切です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。