「薬物の度重なる使用で脳が変性し、薬物への強い欲求をコントロールできなくなっている。意志の力でやめられる段階ではないのです」
反省と回復は別問題だ。患者はすでに十分、反省している。深く反省して、人によっては「いっそ死にたい」とまで思いつめているのに、それでも薬物に手を出してしまう。
日本では「薬物依存には刑罰を」との風潮が強い。逮捕されて刑務所に入所すれば、確かにクスリをやめられる。クスリを使える環境でなければ、薬物への欲求は湧いてこない。
しかし、刑務所から出てクスリを使える環境になると、手を出してしまう。ある患者は「刑務所内では二度とやらないと誓っていたが、出たら人格が変わってしまったようにクスリを使いたくなった」と話したという。
「薬物と手を切るには、治療をおいてほかにありません。重要なのは、継続的な治療なのです」