数字が語る医療の真実

がん検診を過小評価させる意外な理由

 しかし、歴史的には肺がん検診の対照群の肺がん死亡が、当時の一般的な人たちの3分の1にすぎなかったという報告もあります。そうした場合には、検診そのものの効果がないとしても、研究に参加し、健康に気を付けるという全体では効果があったのかもしれません。

 ただそのときにも、「健康に気を付ける」というような大きな枠の中で、がん検診に特別意義があるかというと、なかなかはっきりした効果がないという場合が多いことも確かです。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。