「認知症」を知るための20週間

表情乏しい人が満面の笑み 旅行に行き“ミラクル”起こそう

積極的に外へ(C)日刊ゲンダイ

「要介護5の人も数人交えての団体旅行。それはもう、賑やかですよ」(丸尾さん)

 昨年秋の台湾旅行でも、数々のミラクルがあった。その経験者のひとりがNさん。50代で認知症を発症した夫の在宅介護を始めて25年になる。

 夫は寝たきりで、旅行の2カ月前にどこかで疥癬ダニに感染。感染の拡大を防ぐため、2カ月間一歩も外出できなかった。それにより一気に体力が衰え、ミルですりつぶした食品を少量しか受け付けなくなっていた。

「このままずっと流動食になるんだろうと、覚悟しました」(Nさん)

 旅行どころではない状況だったが、ほぼ毎年旅行に参加している夫は、1年前、前回の旅行から戻ってきたその日から「また台湾行くんや」と楽しみにしていた。Nさんも、旅行をやめることは少しも考えなかった。

 荷物には夫のために、食事をすりつぶすすりこぎ、バナナ、軟らかいパンなどを用意した。

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