がんと向き合い生きていく

死亡者数が最多 肺がんを減らすにはまだまだ時間がかかる

都立駒込病院名誉院長・佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 1960年代後半、喫煙者は男性の80%以上、女性は10%程度でした。当時の映画の中では、俳優がカッコよく煙をはいているシーンを見せていました。その後、少なくとも約20年間は、たとえ病院の診察室でさえ愛煙家の医師によって、また夜勤の看護婦(師)さんの控室でも、火災用のスプリンクラーが作動するのではないかと思われるほど、たばこの煙に満ちていたことがあるのです。今ではとても信じられないことです。

 肺がん患者は男性が圧倒的に多く、65~70%を占めています。そうした時代を過ごされて高齢になり、発症された方がたくさんいらっしゃいます。いま喫煙者が減ったとしても、すぐには肺がんが減ることはないのです。

 大きな問題は、1年間にがんと診断される患者さんの数は肺がんよりも大腸がんや胃がんの方が多いのに、亡くなる患者さんは肺がんが一番多いということです。大腸がん、胃がんは早期診断によって内視鏡で切除できる患者さんが多いこともその理由のひとつとして挙げられます。しかし一方で、肺のX線検査はとても簡便ですし、早期で見つかれば肺がんでも80%の方は治癒します。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。