医者も知らない医学の新常識

「ノセボ効果」を知っていますか?

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「プラセボ効果」という言葉があります。効く薬だと信じて飲むと、実際には何の効果もない物質でも薬としての効果を示す、という現象のことです。薬の効果を調べる臨床試験では、患者さんに分からないように本物の薬と、効果のない偽物の薬を使用するのですが、本物の薬ほどではなくても効くはずがない偽物の薬が明らかに効果を示すことが多いのです。これがプラセボ効果です。

 一方で、「この薬には“悪い作用がある”“副作用が出やすい”」といった先入観があると、その薬が直接影響を与えたわけではないのに、副作用のような症状が出ることがあります。これが「ノセボ効果」(ノーシーボ効果)です。最近、「ランセット」という医学誌に、コレステロールを下げる薬の臨床試験でノセボ効果を調べた論文が掲載されました。この臨床試験では、同じ人で本物の薬か偽物の薬か分からずに服用する期間と、本物の薬と知っていて服用する期間とがあり、筋肉が痛くなるという副作用は「薬を本物と知って飲む」方が「知らないで飲む」よりも40%以上多くなっていたのです。その結果、本当にその薬を必要な人が、ノセボ効果のために薬をやめるという事態が発生していました。

 薬の副作用の情報は大切なものですが、人間は先入観に左右されるので、「説明をすればするほど良い」ということも言えないようです。

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。