モノ忘れ脱出 完全マニュアル

<1>「記憶」と「想起」 まず脳の仕組みを知ることが大事

脳は忘れていくのが基本(C)日刊ゲンダイ

 脳はすべてを記憶していく記憶装置ではありません。忘れていくのが基本です。しかし、一般的に印象に残ったものや覚えようと意識したものは海馬で選択され、長期記憶になります。つまり、しっかりとした記憶にしたいと思えば、「記憶しようと意識する」「何か強く印象付けるものと合わせて覚える」「何度も繰り返して覚える」ということが必要になります。

 ところで、かつてはすぐに頭に浮かんだ恋人の電話番号が、その後彼女と別れ、新たな出会いがあり、やがて電話番号は思い出せなくなったとします。

 記憶には、「記憶」と「想起」の2つがあります。新しいことを覚えるのが「記憶」で、医学的に「記銘力」ともいいます。

 一方、想起は、思い出す能力です。想起する力が低下すると一度は脳にインプットされた記憶をうまく言葉にして表現することができなくなります。これがいわゆる“物忘れ”なわけですが、その理由は、記憶に触れる機会がずっとなかった、思い出したくないという潜在的な意識が働いているなどさまざま。

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米山公啓

米山公啓

作家、医学博士。専門は神経内科。脳に関する著書多数。

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