末期がんからの生還者たち

前立腺がん・大腸がん<3>「手術室のそばから離れないで」

吉田博行さん(C)日刊ゲンダイ

 吉田さんは5月に退院し、6月から抗がん剤治療を開始する。2種類の経口薬を28日間、毎日飲み続け、体力が回復に向かった6月に入って職場に復帰した。

 元銀行員だった吉田さんは退職後、大手の派遣業会社に勤務していた。「死ぬ時は布団の上ではなく、仕事で道を歩いているとき」と言うほどの仕事人間である。

■今度は腹膜播種が見つかった

 職務が順調に拡大していた11月、画像診断などの精密検査で今度は「腹膜播種」が見つかった。目下、有数の医療機関で治療法が研究されている腹膜播種は、種がバラバラにまかれたようにがん細胞が肝臓などの壁を突き破って腹膜に広がった病状だ。腹膜は、臓器を覆っている半透明の膜を指す。

 吉田さんは点滴による抗がん剤治療(アパスチン)を始めた。そのために小さな手術を行い、胸に100円硬貨大の「CVポート」を設置した。

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