がんと向き合い生きていく

「大自然に生かされている命の喜び」患者の言葉を実感した

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 先日、ある県の里山に3日ほど滞在しました。夕方になると、山々が赤く染まり、そしてカエルの大合唱でした。こんな小さなカエルが、たくさん集まったとしても、どうして天まで届くほどの大声になるのか不思議です。

 目の前の畑で友人が摘んできたアスパラガスのおいしさは格別でした。ふと、20年ほど前に「大自然に生かされている命の喜びを知っていただきたい」とおっしゃっていた卵巣がんのGさん(当時54歳)を思い出しました。

 Gさんは他院で卵巣がんの手術を受けてから1年後に再発し、私が担当医となりました。

 診察のため、下着を脱いだGさんの上半身を見た私は正直驚きました。右乳腺の上に横径約10センチ、縦15センチほどの盛り上がった大きな腫瘤、右上腹部にも約12センチ四方の腫瘤が赤紫色に光っていました。卵巣がんの転移でした。痛みはそれほどでもなかったようですが、Gさんは皮膚がいつ破れて出血しないか、そして、これからの短い命を予想されて、とても不安そうでした。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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