実録 父親がボケた

<9>父は通所介護を心から楽しむものの母は疲労困憊

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 楽しそうなのは父だけだ。現状としてはほぼ歩けず、車椅子で移動、夜はポータブルトイレを使用。下剤に頼らないとお通じもない。デイサービスに行っている間は母も解放されるかと思いきや、汚れたズボンとシーツの洗濯、通じない会話、巨体を洗って拭いての毎日。イライラと疲労はたまりにたまって鍾乳洞のようになっていた。

 ごめん、そこは母に任せきりだったよ、私も。

 そして2018年1月末。ついこの前のことだ。父が外出時に転倒し、頭を強打。救急車で運ばれた病院で、検査したものの異常なし。ところがマスクもせずに病院にいたものだから、インフルエンザに感染したのである。無知と無謀を嘆いても仕方ない。高熱で手足は萎え、一時期寝たきり状態になったのだ。

 最悪なことに、介護していた母も発熱。完全に家庭内感染である。

2 / 2 ページ

吉田潮

吉田潮

1972年生まれ、千葉県出身。ライター、イラストレーター、テレビ評論家。「産まないことは『逃げ』ですか?」など著書多数

関連記事