過去のトラウマが原因で病気に…WHOも推奨の治療法とは?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前者の代表、持続エクスポージャー療法(PE)は、トラウマになっている出来事や感情を繰り返し話してもらい、セラピストが傾聴することで慣れが起きて、つらく悲しい出来事は過去のものであること、それに対処することができることを明確に認識できるようになる方法だ。

 一方、EMDR療法は、トラウマとなった出来事を思い出しながら、トラウマ記憶の根源をなす否定的な自分や世界に対する考えを、肯定的な考えに改善する。その間、眼球運動やタッピングなど左右交互の刺激を加える。

 新たな記憶が浮かんでくれば、それを手掛かりにして再び刺激を加える。これを繰り返すことで適応的な記憶の処理が進み、トラウマに伴う心と体の症状が解消されるという。

 この程度なら一人でもできそうな気がするが、どうなのか?

「難しいです。トラウマになる記憶は一度、咀嚼して記憶するには大き過ぎるので、通常の記憶ではなく、いつもの自分とは隔てられた別の場所に、まるで冷凍保存するようにしまわれています。そのトラウマ記憶の処理を行うときには当時の感覚、感情、思考などが生々しく思い出されたり、思いがけない記憶が出てきたりすることもあるので、適応的な情報処理を適切に促す技術が必要です。このため治療法に熟練したセラピストが行う必要があります」

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