少子化の裏で加速するY染色体の退化 人類は絶滅危惧種?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「私はそうは思いません。ヒトとアカゲザルのY染色体を比較すると、両者のY染色体で2億年以上前に消滅したと考えられる400の遺伝子のうち、5つの遺伝子がヒトとアカゲザルで共通に残されていました。これらの遺伝子は、生殖機能を維持する上で必要な遺伝子として消失を免れ続けてきました。このようにヒトのY染色体上の遺伝子が激減したとしても、精子の生産に必要な遺伝子は残るはずです」

 仮に奄美諸島に生息するアマミトゲネズミやトクノシマトゲネズミのようにY染色体を失ったとしても、精子の生産に必要な遺伝子はX染色体や常染色体に移動するなどして残され“男”は存続するに違いない。

「そもそも生物に雄と雌があるのは多様な環境変化に耐えられるよう、多様な遺伝子の組み合わせを持つ子孫をつくるためです。単に子孫を増やすだけなら、自分の体の一部分からクローンをつくる無性生殖が有利です。しかし、これでは地球環境の変化に対応できる多様な遺伝子を持った子孫はつくれません。有性生殖なら精子と卵子が受精することで雌雄の異なる遺伝子が混じり合い、多様な遺伝子を持つ個体をつくることができます。さらに突然変異によって生まれた新たな遺伝子が精子と卵子を介して次世代に伝えられるのです。その結果、さまざまな環境変化に対応できる遺伝的な多様性を生み出せるのです」

 形を変えても男と女が存続する限り、人類は安泰のようである。

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