Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

肺がんの臨床試験で注目 2剤の併用で再発リスクが4割減

肺がんの大林宣彦監督は「あと3000年、映画を作りたい」と(C)日刊ゲンダイ

 そんな遺伝子の多様性が、治療にも悪影響を及ぼします。従来の抗がん剤もホルモン剤も、最新の分子標的薬も、薬を使い続けるにつれて、次から次へと遺伝子変異を生じるため、薬がだんだん効かなくなるゆえんなのです。

 その点についても、今回の臨床試験は有望な結果が得られています。薬を効かなくすることに関与する遺伝子変異が、2剤併用と単剤で差がありませんでしたから、次の分子標的薬の治療につながる可能性が示されたのです。

 私の専門である放射線でも、一度照射したところにできた再発病巣は、放射線が効かないことが珍しくありません。しかし、いろいろな治療をブロックするがんですが、免疫療法と放射線の組み合わせによって、とても大きな治療効果が得られることが分かってきました。その点については次回お話しします。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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