日本人で良かった!公的医療保険

米国における乳ガン治療の実際<4>術後のフォローアップ

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 まだ日本に住んでいたころに、病院で仏頂面の医師に邪険にされたり、看護師さんに叱られたりという経験もあったAさんからすると、その違いは意外に大きかったようです。手術前に明るく接してもらうと、緊張がすーっと解けていきます。みんな「接客業のプロ」として自覚があるし、そうしないと生きていけないのでしょう。

 実際、受診が終わるとすぐに所属する医師グループや病院からメールが来て、満足度調査への回答を求められます。今回はあまり役に立ってもらえなかったプライマリーケア医も、乳がん治療のサバイバルを抜けた後に湿疹の相談で会った時に、「元気い~?」と満面の笑みを浮かべて握手を求めてきました。こういうビジネスライクなところは、医療が特別な存在である日本とはかなり様相が異なります。日本も将来、こうなっていくのか、と感じずにはいられません。

 相談レベルの診察を受けるだけでも200~300ドルくらいかかります。ちょっと具合が悪いくらいだと本当に受診するかどうかいつも迷います。最近は特にサービスが多様化して、「ウオークインクリニック」(ふらっと立ち寄れる簡易なクリニック)とかネット相談室とか安価なものもありますが、質もわからないし、Aさんはまだ利用したことはありません。

 次回は、米国との比較で、素晴らしいところがいろいろある日本の医療保険制度を維持するために、我々がどうすればいいのか少し整理してみたいと思います。

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奥真也

奥真也

1962年大阪生まれ。東大医学部卒業後、フランス留学を経て埼玉医科大学総合医療センター放射線科准教授、会津大学教授などを務める。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。著書に中高生向けの「未来の医療で働くあなたへ」(河出書房新社)、「人は死ねない」(晶文社)など。

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