遺伝子治療薬はここまで来ている

遺伝子の本体「核酸」を用いて遺伝子発現を制御する画期的な薬

写真はイメージ

 ビルテプソは「アンチセンス核酸」と呼ばれる、ある特定の配列を持った核酸(遺伝子の本体)に結合することができる物質です。

 DMDはDMD遺伝子の一部が生まれつきないという異常によって、遺伝子の発現が途中でストップしてしまいます。そのためDMD遺伝子が発現できず、その産物であるジストロフィンが正常に作られなくなって起こります。

 ビルテプソはDMD遺伝子に結合することで、遺伝子発現のストップを解除します。その結果、ジストロフィンが作られるようになり、筋肉の変性と破壊を防ぐのです。

 核酸を用いて遺伝子発現をコントロールするという点は遺伝子治療薬ならではで、非常に画期的といえます。これまで有効な薬がなかったDMDの治療における一筋の光として、その効果が期待されています。

 (おわり)

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神崎浩孝

神崎浩孝

1980年、岡山県生まれ。岡山県立岡山一宮高校、岡山大学薬学部、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科卒。米ロサンゼルスの「Cedars-Sinai Medical Center」勤務を経て、2013年に岡山大学病院薬剤部に着任。患者の気持ちに寄り添う医療、根拠に基づく医療の推進に臨床と研究の両面からアプローチしている。

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