小堀さんが在宅医療で患者さんに関わる期間は、平均すると4年6カ月。その間はずっと、患者が生活する場所に入り、家のしつらえや雰囲気を肌で感じながら、患者の胸に聴診器を押し当てて心音を聞く。
そんな付き合いを続けていれば、おおよそのことが判断できるようになるという。その人が生きてきた歴史やその背景、家庭の事情といったものが見えてくるのだ。
「本人はもちろん家族ともずっと関わるので、どのような最期がいいのか自然と分かってくるようになります。それによって医者は、その人にふさわしいと思われる措置を施すのです」
「救命・根治・延命」の治療をするのか、あるいは「死なせる医療」にするのか。個々の希望と事情に即した判断が迫られることになる。
(取材・文=稲川美穂子)
死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期