死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期

政府は推進しているが…「在宅死」は理想の死に方なのか

小堀鷗一郎氏(C)日刊ゲンダイ

 小堀さんが在宅医療で患者さんに関わる期間は、平均すると4年6カ月。その間はずっと、患者が生活する場所に入り、家のしつらえや雰囲気を肌で感じながら、患者の胸に聴診器を押し当てて心音を聞く。

 そんな付き合いを続けていれば、おおよそのことが判断できるようになるという。その人が生きてきた歴史やその背景、家庭の事情といったものが見えてくるのだ。

「本人はもちろん家族ともずっと関わるので、どのような最期がいいのか自然と分かってくるようになります。それによって医者は、その人にふさわしいと思われる措置を施すのです」

「救命・根治・延命」の治療をするのか、あるいは「死なせる医療」にするのか。個々の希望と事情に即した判断が迫られることになる。

(取材・文=稲川美穂子)

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小堀鷗一郎

小堀鷗一郎

1938年、東京生まれ。東大医学部卒。東大医学部付属病院第1外科を経て国立国際医療センターに勤務し、同病院長を最後に65歳で定年退職。埼玉県新座市の堀ノ内病院で訪問診療に携わるようになる。母方の祖父は森鴎外。著書に「死を生きた人びと 訪問診療医と355人の患者」(みすず書房)。

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