役に立つオモシロ医学論文

社会・心理的要因がもたらす健康リスクは侮れない

離婚歴で死亡リスクは1.44倍に

 病気の発症は単一の原因だけによって生じることは珍しく、一般的には複数の原因が時間をかけて病気の発症リスクを高めます。たとえば、喫煙は肺がんをもたらす原因のひとつといえますが、数年ほど喫煙をしたところで、すぐに肺がんになるわけではありません。喫煙だけでなく、遺伝的要因や生活環境など、さまざまな要因が、ゆっくりと時間をかけ、複雑に影響を及ぼし合いながら肺がんの発症リスクを高めるのです。

 死亡リスクに影響を与える要因はさらに複雑といえますが、具体的にはどんな要因がどれほど影響を及ぼしているのでしょうか。米国科学アカデミー紀要の電子版に、死亡リスクに影響を及ぼす因子と、その関連性の強さを検討した研究論文が2020年6月22日付で掲載されました。

 この研究では米国に在住の1万3611人(平均69・3歳、女性58・6%)が対象となり、6年にわたり追跡調査が行われています。なお、研究結果に影響を与えうる年齢、性別、人種などの因子について統計的に補正をして解析されました。

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青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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