新型コロナ後遺症の正体

心筋障害の報告も 心電図や血液検査以外に超音波検査が必要

新型コロナウイルスに感染し退院後も体調不良が続く人を対象にしたリハビリ施設で運動する男性=イタリア・ジェノバ(C)ゲッティ=共同

 新型コロナウイル感染ではこのようにして、心機能低下、心筋虚血、不整脈、不安定狭心症や急性心筋梗塞、高血圧症が生じる。

 もともと心臓の駆出機能が正常に見えても拡張障害などの基礎疾患があると、「高熱」、「頻脈」(ひんみゃく)、「脱水」、「腎機能低下」などが引金で心不全になることがある。また、「急性心筋梗塞」、「酸化ストレス」や「サイトカインストーム」による炎症が心筋障害を生じる場合がある。「間質性肺炎による肺の障害」が「右心不全」を生じることも多い。中国では、新型コロナウイルス感染症の患者全体で心不全が24%に、死亡例では49%に認められたという。しかも、心筋障害を示す心筋トロポニンやCK―MBが上昇すると、患者の予後が悪いことがわかっている。

 いずれにせよ、一度低下した心機能は完全に正常にはもどらない。特に強い心筋炎や心筋梗塞が生じれば、広範な部分が壊死して、とりかえしのつかない心不全状態を残すことになる。また、不整脈も残ることがあり、心機能が低下している場合は、心不全や突然死を起こしうる。新型コロナウイルス感染症の患者も例外ではない。

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東丸貴信

東丸貴信

東京大学医学部卒。東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理・循環器センター教授、日赤医療センター循環器科部長などを歴任。血管内治療学会理事、心臓血管内視鏡学会理事、成人病学会理事、脈管学会評議員、世界心臓病会議部会長。日本循環器学会認定専門医、日本内科学会認定・指導医、日本脈管学会専門医、心臓血管内視鏡学会専門医。

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