新型コロナでわかった不都合な真実

感染対策のベースになる研究論文はどこまで信じていいのか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 実際、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑・京大名誉教授は受賞時の記者会見で「よくマスコミの人は『ネイチャー、サイエンスに出ているからどうだ』という話をされるけれども、僕はいつも『ネイチャー、サイエンスに出ているものの9割は嘘で、10年経ったら残って1割だ』と言っていますし、大体そうだと思っています」と語っている。

■新型コロナに関する研究論文が数多く作成されているが…

 ところが、突然現れて世界を席巻している新型コロナウイルスについての研究論文は世界中で何万編も作成され、その中のいくつかが科学・医学雑誌に取り上げられているが、異常な事態が続いている。

 追試や検証される間もなく、事実として政策に盛り込まれるケースが出ている。それが世の中の混乱を招いている側面もある。

 例えば、抗マラリア薬で安全性も確かめられているヒドロキシクロロキンと呼ばれる薬が、新型コロナウイルス感染症に有効とされながら今年5月、世界保健機関(WHO)が臨床試験を一時中止し、6月に米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可を取り消す騒ぎが起きた。日本でも日本感染症学会の「COVID―19に対する薬物治療の考え方第3版」まで記載されていたヒドロキシクロロキンの項目は第4版以降消えた。世界的に権威のある医学雑誌「ランセット」に、新型コロナウイルス感染症により世界671施設に入院した約9万人の患者を対象とした大規模試験の結果、新型コロナへの有用性は認められず、入院中の心室頻拍や死亡率が上昇したと指摘する論文が掲載されたからだ。

2 / 3 ページ

関連記事