警察庁と厚労省では、全国の総自殺者数が異なっているだけではない。都道府県別の自殺者数も違っている。というのは、警察の統計は遺体が見つかった場所に基づいているからだ。
検視や遺体の保管、遺族への聞き取り、必要なら捜査といったもろもろの仕事を担当するのは、現地の県警と決まっている。そのため警察にとっては、現場中心の統計は、むしろ当然と言える。
一方、厚労省の統計は、自殺者の住所が基本になっている。人口動態という視点に立てば、住民票が基本になるのは当然で、その意味で厚労省の統計にも合理性がある。 では実際に、どのくらいの違いがあるのだろうか。前回書いたように、両者の統計の取り方には違いがあるのだが、細かいところには目をつぶって、2019年の人口10万人当たりの自殺者を計算してみよう。するといくつかの県では、かなり大きく異なっていることが判明した。数字の違いが目立つ県をまとめると、次のようになる。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。