新型コロナワクチンの疑問に答える

なぜ国産の新型コロナワクチンの開発は遅れているのか?

米ファイザー社製の新型コロナワクチン(C)ゲッティ=共同

「ワクチン開発は、その過程で病原体を取り扱います。そのため、安全性が確保された実験室を使用するのですが、その数は限られています。また、実験室はウイルス危険度によってP1~4の段階がありますが、防護服の着用や排気方法に規制のある封じ込め実験室であるP3(鳥インフルエンザ、SARSウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど)で稼働中なのは東大や阪大など20カ所余り。さらに高度な封じ込め実験室となるP4(エボラウイルスなど)で稼働中なのは現在、国立感染症研究所(感染研)しかありません。全国に複数点在するのはP2(インフルエンザ、C型肝炎、デングウイルスなど)と呼ばれるタイプで、人や動物に対し、病気を起こす可能性の低い微生物や起こしても重大な影響を与えない微生物を扱うことができる実験室なのです」

 研究者の数も306人(2018年)で、職員全体で1万5000人規模の米疾病対策センター(CDC)とは比べものにならないレベルだ。

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奥田研爾

奥田研爾

1971年横浜市立大学医学部を卒業後、米国ワシントン大学遺伝学教室、ハーバード大学医学部助教授、デューク大客員教授、スイスのバーゼル免疫研究所客員研究員として勤務。2001年横浜市立大学副学長、10年から名誉教授。12年にはワクチン研究所を併設した奥田内科院長。元日本エイズ学会理事など。著書に「この『感染症』が人類を滅ぼす」(幻冬舎)、「感染症専門医が教える新型コロナウイルス終息へのシナリオ」(主婦の友社)、「ワクチン接種の不安が消える コロナワクチン114の疑問にすべて答えます」(発行:日刊現代/発売:講談社)のほか、新刊「コロナ禍は序章に過ぎない!新パンデミックは必ず人類を襲う」(発行:日刊現代/発売:講談社)が8月に発売される。

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