がんと向き合い生きていく

コロナ禍でのがん検診は「不急」だとしても「不要」ではない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 新型コロナウイルスの流行が続き、がん検診を受ける方が大幅に減っています。多くの自治体や企業でがん検診が中止になった時期があったことも影響してか、特に胃がん検診の減少が目立つようです。

 検査を行う病院は感染防止対策を徹底しているわけですが、それでも病院でのクラスター発生が報道され、さらには緊急事態宣言下で不要不急の外出を控えるようにと言われると、受診に二の足を踏む方がおられるのでしょう。検診を受けないで、がんが進行してから見つかることになると、がんで亡くなる方が増加するのではないかと懸念されています。

 昨年12月25日、日本消化器内視鏡学会は、飛沫拡散やエアロゾル発生の危険が高い消化器内視鏡検査について、医療者向けに追加の提言(改訂7版)を出しています。以下、その一部を紹介します。なお、一般的に新型コロナウイルスといわれますが、ウイルス名は「SARS―CoV―2」、病名(新型コロナウイルス感染症)は「COVID―19」と呼ばれます。

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(1)感染拡大状況が続いている中、適切なトリアージと確実な感染防護策の徹底をお願いします。

(2)空気感染の可能性も考慮して、内視鏡室の換気徹底をお願いします。

 ……SARS―CoV―2のPCR検査や抗原検査陽性の方・以下の条件のいずれかに該当する方(COVID―19が確定した症例・臨床的にCOVID―19を疑う症例:内視鏡診療におけるハイリスク患者)に対しては緊急性のある場合においてのみ消化器内視鏡診療の施行を推奨します。

※治癒していると考えられる場合は別記載があります。

 ……なお、ハイリスク条件に該当しない方(無症候等により臨床的にCOVID―19を疑わない症例:内視鏡診療におけるローリスク患者)への検診を含む消化器内視鏡診療においても、SARS―CoV―2陽性の可能性があることを十分にご理解いただいて、確実な感染防護策を取った上で施行してください。

 ……無症状の感染例は一定数存在していることを念頭に、消化器内視鏡診療の際には、飛沫感染、接触感染、更には空気感染も十分に考慮した感染防護策を講じることを強く推奨します。

 ◇  ◇  ◇ 

 日本癌治療学会、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会の3学会合同で、COVID―19に関して「患者さん向けQ&A(改訂3版)」を2021年1月25日に、「一般的な指針として地域、流行状況、医療体制で異なる」としながら次のように示しています。一部抜粋します。

 ◆  ◆  ◆ 

Q…がん検診は受けても大丈夫ですか?

A…がん検診や健診・人間ドックも感染拡大のリスクとなる懸念があります。一方で過度な受診控えは早期発見の機会を失いかねません。多くの医療機関で受診者とスタッフの双方の感染防止を配慮して検診を行っています。まず、ご自身が受診できる医療機関にがん検診や健診の受診が可能かをお問い合わせください。

Q…内視鏡検査が予定されています。どうしたらいいですか?

A…多くの施設において、内視鏡検査における感染リスクを最小限にするべく努力がなされており、新型コロナウイルス感染症が収束していない状況でも通常の内視鏡診療が行える様に体制を整えています。一方で、新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下では必要最小限にすべきと考えられています。ご自身の検査の必要性を検討いただき、予定通り受けるべきか確認してください。

 ◆  ◆  ◆ 

 これらの学会の掲示は、今後の状況によって改訂されるものと思いますが、検診・健診は「不急」ですが、「不要」ではないのです。一般のワクチン接種開始が待たれますが、いまは3密を避け、流行を早く収束させたいものです。

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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