女性の不妊治療で何が行われているのか

いまや16人に1人は体外受精で生まれている どんな治療なのか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 受精した卵は「インキュベーター(培養器)」と呼ばれる温度や湿度、二酸化炭素濃度などが厳重に管理された容器の中で大事に育てます。現在は「タイムラプスイメージング」と呼ばれる受精卵の発育過程を連続的に撮影できる培養器を導入している施設もあります。この器械を使うと、自分の受精卵の発育を動画にして見ることができます。

 得られた受精卵を子宮に戻す過程を胚移植と呼びます。胚移植には採卵した周期に子宮に戻す「新鮮胚移植」と、できた受精卵を凍結して別の生理周期に戻す「凍結融解胚移植」があります。複数の受精卵が得られれば、凍結することによって1回目の移植で妊娠できなくても再度採卵からやり直すのではなく、凍結してある受精卵を融解し複数回の胚移植を行うことが可能です。

 もともと体外受精は卵管が閉塞している方や精子所見が悪い方に行われてきましたが、現在ではタイミング法、人工授精を行っても妊娠できず、体外受精にステップアップされる方が大半を占めています。日本産科婦人科学会の報告では、2018年に体外受精で生まれたお子さんは5万人を超え、16人に1人が体外受精によって生まれています。体外受精で生まれるお子さんの数はここ10年で約2倍になっており、いまや学校のクラスメイトに2~3人は体外受精で生まれたお子さんがいる、というくらい身近な治療になっているのです。

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小川誠司

小川誠司

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

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