女性の不妊治療で何が行われているのか

不妊治療を続けても難しい場合の選択肢 卵子提供の実情と課題

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 不妊治療と他の医療との大きな違いは、患者夫婦のことだけでなく、これから生まれてくる子供のことも考えて治療しなければならないという点です。「自分がどのようにして生まれ、自分の遺伝的ルーツはどこにあるのか」を知る権利、これを「出自を知る権利」と呼びます。現在の精子・卵子(配偶子)の提供は、提供者は匿名であることが大前提であり、そうなると提供配偶子で生まれたお子さんは、「遺伝上の親が誰であるか」を知るすべはありません。

 これから日本でも提供配偶子による生殖医療はますます増えていくと予測されます。その中で提供を望むご夫婦も、われわれ医療者も「生まれてくる子供の福祉」を十分に考えて、治療を進めて行く必要があるのです。

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小川誠司

小川誠司

1978年、兵庫県生まれ。2006年名古屋市立大学医学部を卒業。卒後研修終了後に慶應義塾大学産科婦人科学教室へ入局。2010年慶應義塾大学大学院へ進学。2014年慶應義塾大学産婦人科助教。2019年那須赤十字病院副部長。2020年仙台ARTクリニックに入職。2021年より現職。医学博士。日本産科婦人科学会専門医。

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