上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

各専門科から集まったチームだからこそ有効なコロナ治療法が見つけられる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 当院のコロナチームは、薬物療法に加えてサイトカイン吸着療法を実施し、合併症で起こる血栓症への対策も行っています。体内の血液を体外の機械に排出し、特殊な膜を通過させてサイトカインを吸着してから体内に戻す治療で、仮に血栓ができていると膜が詰まって使えなくなってしまいます。そういう患者さんは血栓症が進行している状態だとはっきり判断できるので、その場合は抗凝固薬を投与し、血栓対策済みの膜を使用するなど、早めに効果的な対応が取れます。もちろん費用対効果も重要視しています。

 検査データだけでなく、臨床的に血栓症が進行しつつある状況かどうかをモニターできるため、コロナ患者が血栓症で亡くなったり重症化するケースが極めて少ないという結果が出ています。

 新型コロナウイルス感染症に対するサイトカイン吸着療法などの血液浄化療法は、世界中で効果があるのかどうか議論があり、実施しなかった施設も多くありました。そんな中で効果的な可能性があるのならと着目したところが当院のコロナチームの強みといえるでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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