心臓手術の名医が語るコロナ禍の治療最前線

命に関わる心臓だからこそ予防が大切 肥満を改善し動脈硬化を防ぐ

写真はイメージ(C)PIXTA

 たとえば、動脈硬化を抑えるなどの働きがあるホルモンのアディポネクチンの分泌が減少する一方で、食欲を抑えるレプチンが効きにくくなり、血液中からブドウ糖の取り込みを抑制するTNFーαやレジスチン、血管を収縮させる物質の材料となるアンジオテンシノーゲンの分泌が増加する。

 その結果、高血糖によって血管内皮が傷ついたり、血管が収縮して細くなって血圧が上がり、血管壁を傷つけたりする。さらに、血管の素材となるコレステロールがどんどん供給されて血管内に蓄積し、それを処理するためのマクロファージの死骸も重なって堆積。血管が膨らみ本来のしなやかさを失い、急速に動脈硬化が進むことになる。

「ほかに気をつけたいのはがん患者さんです。心臓に影響を与える抗がん剤も少なくありません。がん患者さんは定期的に心臓の検査もした方がいいかもしれません」

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渡辺剛

渡辺剛

1958年東京生まれ、ニューハート・ワタナベ国際病院総長。日本ロボット外科学会理事長、心臓血管外科医、ロボット外科医、心臓血管外科学者、心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医など。1984年金沢大学医学部卒業、ドイツ・ハノーファー医科大学心臓血管外科留学中に32歳で日本人最年少の心臓移植手術を執刀。1993年日本で始めて人工心肺を用いないOff-pump CABG(OPCAB)に成功。2000年に41歳で金沢大学外科学第一講座教授、2005年日本人として初めてのロボット心臓手術に成功、東京医科大学心臓外科 教授(兼任)、2011年国際医療福祉大学客員教授、2013年帝京大学客員教授。

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