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HIV感染パンデミック収束への一歩か? 完治した世界3例目は女性

写真はイメージ

 アメリカの臍帯血ドナー登録者のほとんどは白人ですが、今回移植を受けて成功した女性がミックストレース(2つ以上の人種ミックス)だったことから、今後HIVとがんの両方を持つアメリカ人を完治できる可能性があると考えられているのです。

 もうひとつこの治療のメリットは、骨髄移植に比べ副作用がはるかに少ないことです。免疫系をすべて入れ替える骨髄移植は、ドナーの細胞が受け手の細胞を攻撃する移植片対宿主疾患などの重い副作用を引き起こし、2人の男性のうち1人は命を失いかけ、もう1人も体重の激減や感染症により聴覚を失いました。それに比べ今回、臍帯血移植を受けた女性は、近親者からの血液と組み合わせ、移植片対宿主疾患を引き起こさず、術後17日後に退院しました。

 この女性は2013年にHIV感染、17年に骨髄性白血病を発症したため、HIVに対して自然抵抗力を持つ人物から臍帯血移植を受けました。手術から37カ月後にはHIVを抑える抗レトロウイルス薬の投与を終え、それから14カ月後に受けた検査でもHIVウイルスはまったく検知されなかったといいます。

 20年末現在、世界のHIV感染者は3700万人で、68万人が死亡しましたが、1980年代から続くパンデミックがようやく終わる兆しが見えてきました。

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シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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