上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

犬に多い僧帽弁閉鎖不全症の外科手術ができるようになった

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ですから、犬の手術でもチーム医療が重要で、執刀医のほかに、助手、麻酔医、看護師、人工心肺を管理する技師など、5~8人のチームで手術に臨みます。手術では、血圧や出血量などをしっかりモニターしながら適切な管理を行わなければなりませんし、犬用の輸血も準備しておく必要があります。

 こうした進歩に合わせ、僧帽弁閉鎖不全症に対する外科手術は10年ほど前は死亡率が40~50%だったものが、最近は手術数が多い獣医院では10%程度まで改善されているようです。ただし、犬の心臓手術を行える獣医師はまだそれほど多くはなく、実施できる施設も限られるのが現状です。また、手術費用も150万~200万円ほどかかります。

 いまは、ペットは家族の一員だという人も多いでしょう。われわれ人間と同じように、さらに医療が進化して少しでも健康に長生きできるような環境の整備が期待されます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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