前回、心臓の「肉腫」の手術についてお話ししました。悪性腫瘍である肉腫はいわば心臓にできるがんで、できる限り予後を良好にするためには心臓や血管にできた腫瘍を手術ですべて取り切ることが重要です。もしも取り残してしまうと、早期に再発・転移して生命予後が極めて悪くなってしまいます。
腫瘍をすべて取り切る手術では、一部の血管はつなげたまま心臓全体を体外に取り出してから処置を行うというお話もしました。心筋の保護を行いながら、残す必要があるパーツだけの状態にして、腫瘍のある部位(血管や心房など)をすべて人工素材と交換し、心臓を“再建”するのです。大掛かりな場合でだいたい6時間くらいかかります。
こうした肉腫の手術は、近年、増えてきた「低侵襲手術」では対応できません。低侵襲手術とは、簡単に言うと「体に負担の少ない手術」のことで、いまはさまざまな方法が登場しています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」