そこで、あえて胃の内側から腹腔鏡でがんのある箇所の胃壁を穿孔させる=穴を開けるくらい切り取り=、その後、外科医が穿孔した部分を内視鏡で確認し、胃の外側から縫い合わせて修復するという方法が行われています。トラブルと成功が紙一重だとすれば、腹腔鏡で内側からトラブルのレベルまで処置しておいて、それを外側から外科的処置で抑え込むという発想です。少しでも根治性を高めるために、内科と外科が協力して手術に当たるのです。
こうした計画的な外科と内科の共同作業が今後ますます進化していけば、患者さんにとって大きなプラスといえます。これまでは負担の大きかった治療が小さな負担で受けられるようになるうえ、病気についてもより不安がない状態で治せるようになるのです。
また、外科医にとっても新たなキャリア形成につながります。これまでは、カテーテルや内視鏡による内科治療が何らかのトラブルを起こしたときに外科的な対処を行ういわば“後始末”を任されているような不均衡もありました。しかし、いまは内科医と外科医で釣り合いが取れて、両者が補完し合うことで患者さんのために活躍できる時代に入ってきたといえるでしょう。チーム医療の真価はこういう形で発揮され、医療者側にも患者管理の負担軽減をもたらしています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」