医者も知らない医学の新常識

心臓と認知症との意外な関係 米国医師会の医学誌で報告

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 心臓と脳はどちらも生きるために必要不可欠な臓器です。そして、その両者は決して無関係ではありません。心臓は血液によって全身に酸素を運ぶポンプで、その血液は脳にも運ばれているからです。

 心房細動という不整脈があります。これは心臓の中の心房という部分が、けいれんのような異常な動きをして、動悸などの不快な症状が起こる病気です。この心房細動が長く続くと、心房は大きくなって血液の流れも悪くなり、そこに血の塊である血栓ができやすくなります。その血栓が血液に乗って脳に運ばれると、脳の血管が詰まる脳梗塞の原因になるのです。

 しかし、もっと軽い心臓の異常でも、脳の病気のリスクになることが、最近注目されるようになっています。今年の米国医師会による医学誌に、心臓の異常と認知症との関係についての論文が掲載されました。アメリカで4000人以上の中高年を、心臓の超音波検査で詳細に調査したところ、心臓の左房という場所の機能が低下すると、認知症のリスクが最大で2倍程度高まることが明らかになったのです。

 もちろん心房細動で脳梗塞を起こせば、脳の働きは低下して認知症も増えるのですが、そうした病気はなく、心臓の働きが少し低下した程度でも認知症自体は増えていました。心臓を健康に保つことは、認知症予防にも重要であるようです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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