がんと向き合い生きていく

日本が世界に誇る胃がん早期診断は佐野先生の貢献が大きい

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 その後、オーストラリアの研究者・ウォーレンとマーシャルは、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍の原因ではないかと考え、胃の粘膜にすみ着いている細菌の培養に成功しました。そして、自ら培養したピロリ菌をのみ込み、急性胃炎になったのです。彼らは2005年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

 さらに、ピロリ菌は口から侵入して胃にすみ着き、萎縮性胃炎を進行させ、がんが発生しやすくなること、ピロリ菌の感染のない人から胃がんが発生することは少なく、胃がんはピロリ菌の感染が深く関わっていることが分かってきました。

 13年、ピロリ菌除菌治療は、それまでの胃・十二指腸潰瘍に加え、慢性胃炎に対しても保険適用となりました。以後、除菌治療を受ける人が増え、ピロリ菌の除菌が開始されてからは胃がんの死亡者は減ってきています。これは、胃がんに対する予防治療として画期的なことと思います。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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