年間143万人死亡の多死社会ニッポンでなぜ「在宅診療」は普及しないのか

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 なぜ、在宅医療の利用者が増えないのか。山中院長は「ちゃんとした在宅診療があまりにも少ないから」という。

「在宅診療をうたいながら、看取りはもちろん、急な発熱や体調不良といった軽い症状でも救急車などを呼ばせて急性期病院に任せる“なんちゃって在宅診療”が実に多い。本来の在宅診療は、がんの末期や難病、重度精神障害など高度に専門性の求められる分野において、どれだけ重い病気でも、安易に救急搬送するのでなく、患者さんが愛する自宅で人生を完結させる気概が求められます。ドラマなどで見られるような、大きな病院につなぐまでのスーパードクターによる緊急対応とはまったく意味が違います」

 在宅診療の基本は、「24時間365日」。「病院に行けない重症度の高い患者」を在宅において「看取りまで」を医療的にケアすることだという。そのため、在宅医療の現場で働く医師らは高度な技術と人間性が求められる。

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