医者も知らない医学の新常識

コーヒーが禁煙を成功に導く? 神経生理学の専門誌で発表

写真はイメージ

 たばこには体に有害な多くの作用があり、禁煙は健康のため必要であることは間違いありません。ただ、喫煙を習慣としている人にとって、禁煙はそれほど簡単なことではありません。この禁煙の難しさは、たばこの煙に含まれるニコチンに依存性があり、吸うのをやめると離脱症状が生じることが大きな理由です。

 離脱症状を軽くするにはどうすればいいのでしょうか? 喫煙を習慣にしている人からは、朝の一服の時にコーヒーを飲むと、より気持ちが落ち着くという感想がよく聞かれます。このことからは、コーヒーとたばことの間に何らかの関係があることが疑われます。

 今年の神経生理学の専門誌に、たばことコーヒーとの関係についての興味深い研究結果が発表されています。コーヒーの抽出物の中には、ニコチンが脳で結合する受容体に、同じように結合する性質のある成分があって、それにより活性の強い受容体の働きが抑制されるのです。喫煙者は体がニコチンに対して敏感になっていて、それがたばこをやめられない大きな原因と考えられているのですが、その敏感さを弱めるような働きが、どうやらコーヒーにはありそうなのです。

 朝のコーヒーがたばこと相性が良いのも、その働きによると考えられます。コーヒーの成分をうまく利用することにより、禁煙をより容易に行うことができるようになるかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事