末期がん患者がたどる経過について周囲が知っておくべきこと

「基準量の点滴」は患者さんを苦しめることも…

 肝転移は腹水を招く。もともとお腹の中には腸がスムーズに動くために少量の腹水が存在しているが、これが多くなる。肝臓の機能がストップしてアルブミンが作られなくなり、血管の外に出た水分を血管に戻して保持できなくなるからだ。

「肺との境界線である横隔膜が押し上げられ呼吸がしづらくなったり、心臓や各種臓器の負担が大きくなって、強い全身倦怠感が出たりします」

 治療は炎症を抑えるステロイドで血管からの水漏れを最小限に防ぐとともにお腹にたまった水分を利尿剤で排出することが大切だ。しかし病院では血管内脱水を防ぐ名目で、腹水でも点滴を継続することがあるという。

「点滴をすると治療しているように思えますが、患者さんを苦しめるだけです。腹水がある場合は、水分量を制限する必要があります。腹水を物理的に抜いてアルブミンだけ体に戻す手技もありますが、腹水を抜くことが血圧を低下させたり、全身の栄養状態を悪化させることにもつながります」

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